Kさん(敗戦当時小学校3年生・男性)

メモが見つからないので、10年前に、Kさんから聞いた話を、記憶を頼りに書きます。
浦和に焼夷弾が落ちて家の納戸に火がついた。あっという間に燃え広がって、家が焼け、何一つ持ち出せずに逃げた。その日は僕の誕生日で、母は、僕が好きだからと、とっておきの小豆を煮てくれていた。火がおさまって、家のあった所へ行ってみたら、鍋に小豆が真っ黒に焦げついていて、悔しくて涙が出た。
次の日、学校へ行った。全て燃えてしまったので、何も持たずに行った。すると担任の男の教師が、「貴様は天皇陛下から頂いた教科書を、持ち出さずに燃やしたのか!」と、いきなり僕に往復ビンタをした。
その教師は後に、浦和市の教育長にまでなり、死んだ時は盛大な葬式だった。兄は葬式に行ったが、僕はどうしても行く気になれなかった。